
この記事では「クリアー塗料」「クリアーカラー」について解説しています。
「透け感のある塗装」には必須の「各種クリアー塗料」、その性質を知るための手がかりとしてもらえれば幸いです。
クリアー塗料 とは
「クリアー塗料」とは「色が付いていない(顔料の入っていない)透明な塗料」の事です。

「色が付かない水みたいな塗料に何の意味があるの?」と思うところですが「色」を変えずに「質感」だけを変えるのは、プラモデル・フィギュア製作においては重要です。
その「質感」を調整することができるのが「クリアー塗料」なんです。
例えば
- 【つや消し】
- 荒い粒子を使った透明な塗料。
- 表面をざらつかせて光の「乱反射」を起こし、マット(艶の無い)な表面を作る。
- 【つや出し】
- きめ細かい粒子を使った透明な塗料。
- 表面を均一に整えて光の「正反射」を起こし、ツヤツヤした表面を作る。
既にお分かりかと思いますが、「プラモ・フィギュア制作」でよく使われる「つや消しトップコート」や「光沢トップコート」は「クリアー塗料」の一種です。
クリアーカラー塗料 について
「色が付いていないのがクリアー塗料」と上では書きましたが中には「色味を持つクリアー塗料」も存在します。
それが「クリアーカラー塗料」です。
「クリアーカラー塗料」はその名の通り
クリアー(透明感)を持ったカラー(着色)塗料
です。
「クリアー(透明感)」を持つということは「下地の色を通す」ということです。
ここが「通常の塗料(顔料入り)」と違うところで、通常の塗料は
「顔料(色の付いた粒)」でパーツを覆い、下の色を通さず自分の色を発色させる
という物です。

対して「クリアーカラー」は
パーツ(下地)の色を潰さず、重なるようにして色味を変える・加える
という物です。

例えるなら
- 【通常の塗料】
→上から色紙を被せる - 【クリアーカラー】
→上からセロファン紙を被せる
という感じでしょうか。

「色紙」は何枚重ねても「色紙の色」しか出せません。
(色や材質によって多少は影響があります)
しかし「セロファン紙」のような透明なものは重ねれば重ねるほど色味が濃くなります。

通常の塗料はある程度塗り重ねて発色したら、(多少は下地の影響を受けるとはいえ)その後大きく色味は変わりません。
これは「顔料の色」で固定されているからです。
「透けない色」をいくら塗り重ねても、「その顔料の持つ色」から外れた発色はしないのです。

しかし「クリアーカラー」のような「透ける色」は塗り重ねれば塗り重ねるほど「下の色に足し算」するようにしてより濃く発色します。

「アクリル絵の具」と「水彩絵の具」の関係にも似ていますね。

ただし、何度か書きましたが「不透明塗料(顔料系)」でも「薄い色」だったりすると「下地の影響」もそれなりに受けるので注意が必要です。
「顔料系」と「染料系」クリアカラー
ここまで「通常の塗料(顔料入り)」と「クリアーカラー」の違いについて説明していきました。
が、クリアーカラーには
- 顔料系
- 染料系
の2種が存在します。
顔料系
「顔料(不透明な粒)」なのに「クリアー塗料」というのは矛盾しているようですが、これは「超微粒子化」した特別な顔料を使用した「Mr.カラーGXシリーズ」等で実現しているクリアー塗料です。
「クリアーな顔料系塗料」の特徴は「にじまないこと」です。
「染料系塗料」は、塗り重ねることで下の塗膜が"溶けて"しまい、にじむことがあります。
反面、「顔料系クリアー塗料」はちゃんと乾燥させた後ならにじむことはありません。
また、染料系塗料は「紫外線」に弱いのですが、顔料系は紫外線にも強いらしいです。

染料系
上で書いた通り「染料系クリアー塗料」は"にじみ"が起きてしまいます。

顔料系は「粒」なので"にじむ"ということはありません。
しかし「染料系」は「色が液体(溶剤)に溶けている」ので、乾燥した後でも上から「染料系塗料(溶剤)」を吹かれると、じわじわと溶剤成分で下地を溶かしてしまいます。

逆に「にじみを活かした塗装方法」もあるそうですが、そうでない場合は素人意見だと「顔料系」の方が使いやすい印象です。
クリアー塗料 の用途
ここからは具体的な「クリアー塗料の用途」を見ていきます。
質感を変える
上でも書きましたが
- つや消し
- 半つや/つや 出し
など「色味を変えずに質感だけを変えたい」という場合には「無色のクリアー塗料」を塗布すると良いでしょう。
印象を変えたい時に
「下地を潰す」のではなく「下地に透けて重なる」のが「クリアー塗料」です。
なので「下地の色を生かしつつ、『少しだけ』色味を変えて印象を変える」という使い方が出来ます。

例えば
- 「寒色」を上から吹いて、冷たい(工業製品的な)印象を加える
- 「暖色」を上から吹いて、温かい血の通った印象を加える
などなど。

「透け感のある塗装」をしたい時に
「べた~っとした不透明な塗装」ではなく「下地の色がうっすら透ける、透明感のある塗装」をしたい場合は「クリアーカラー」の出番です。
「透明感」というのは一言で言うと「下地を反射させること」ですので、下地を潰さない「クリアーカラー」はその用途に適していると言えます。
例えば「リアルで透明感のある肌」を塗装したい場合、下地に「赤系の暖色(フェオメラニンの色)」を塗って、その上から「クリーム系の色(表皮)」を塗ると「血の通った生き生きとした肌」を表現できます。

「肌の色を不透明塗料でベタ塗りした肌」だと、どうしても「作り物感」が出てしまいますが、「クリアーカラーを使った透け塗装」なら「生物間のある肌」が作れます。
上で説明した「肌」のように「透けている物質」を塗装で再現するのに、「クリアーカラー」は良く用いられます。
キャンディ塗装
憧れる人も多いであろう「キャンディ塗装」も、「クリアー塗料」を用いた塗装テクニックです。
「シルバー」などの「メタリックな色」を下地に塗り、その上から何度も「クリアー塗料」を薄く塗り重ねて、「幾層ものクリアー塗料の反射によって生まれる」、独特な輝きを作ります。

この他にもいろいろな「透明な塗料であることを活かした塗装方法」があり、「クリアー塗料」を用いることで表現できる範囲が大きく広がることでしょう。
まとめ
今回は「クリアー塗料」「クリアーカラー」についての記事でした。
特に有機的なものを作る際は「透け感」が重要になる場合が多いので「生物」をメインで作る方は、覚えておいて損は無いかなぁと思います。